勲章の階級について、大綬や星章などランクを解説

研究

貴族や王族とかが肩から下げてるあのタスキは何なのか。勲章のランクってどうなっているの?
そういった疑問の、マニアックなところを掘り下げていきます。
簡単な疑問だとウィキペディアを確認した方がスムーズです。

一般的な勲章は小綬、タスキのようなのが大綬。最高は頸飾

勲章と言われてパッと思い浮かぶのが、日本語で小綬に分類される勲章です。
軍人がパレードなどでリボンからぶら下げているのが小綬の勲章となります。
一般的に小綬の勲章は中綬や大綬の勲章に比べると格下のものです。なので種類豊富で受勲機会も多いことから、軍人たちの胸にたくさんついています。

(小授の画像)
勲章というと良く思い浮かべるタイプのデザイン。左から4等オフィサー、5等フェロー、6等メンバーとランクが落ちて装飾は簡略化され、材質も安っぽくなります。

逆に格の高い勲章が、首から下げるタイプの中綬、あるいはタスキのような大綬となります。

中綬式の勲章
一般的な中綬式の勲章です。ナチスドイツでは十字の中綬勲章をベースに複数の等級が用意され、アクセントの追加で区別しました。

中綬で格が高い勲章には、アメリカの(議会)名誉勲章があります。同勲章の多くが戦友のために自分を犠牲にした功績に対して与えられていることから、受勲者は下士官に多く将軍にはめったに見られないものです。なお、アメリカは大綬の勲章が存在しない国です。

一般的に勲章としてもっとも格の高いものは頸飾というネックレスの形状となっています。
この勲章ともなると国王だけが身につけるような高位のものとなります。よって見かける機会はあまりないのですが、ガーター勲章のように頸飾も勲章の一部となっている場合は、王族でなくても身につけています。

(中曽根元総理の合同葬にて)
中曽根元総理の合同葬にて。日本の大勲位菊花章頸飾をはじめに、フィリピンやエジプトの頸飾級勲章、諸国の大綬級勲章が並べられています。

大綬は大きな勲章のサイズに合うだけの大きなリボンを肩からタスキをかけるように佩用したものとなります。

大綬はサッシュの先に正章を付けたもので、多くの場合は星章とも呼ばれる副章を付けます。副章は略式の正装に使ったり、正章と同時に着用したりします。

この大綬の略装、あるいは同時に佩用する副章として星章というものが良く使われます。
星章は一般的に左胸側に佩用するものですが、場合によっては右胸に佩用します。

小綬や大綬を英語で何というのか?

実のところ、小綬、中綬、大綬は日本において使われている言葉で、英語圏ではそういったカテゴリーは存在しないものです。星章についてはStarといいます。
一般的な勲章である小綬の佩用については、Wear the badge from a ribbon on the left chest.などと、リボンで左胸から記章やメダルなどを吊るとされています。中綬についてはWear the badge from a ribbon around the neck.リボンで首から吊るすとされています。
一方で大綬の特徴である大きなタスキは、昔からサッシュ(sash)と呼ばれており、トルコに由来するアクセサリーでした。近代的な勲章システムを作り上げたのは英国をはじめとした西欧ですが、サッシュがトルコ由来であるように非ヨーロッパ圏から影響を受けたものは少なくなく、のちにネクタイへと発展したスカーフの文化は東欧由来と考えられています。英語ではWear it on a sash passing from the right shoulder to the left hip.などといいます。なお、右肩からかけるか左肩からかけるかは勲章によって異なりますが、一般的には右肩からかけるものとされます。(歴史的な経緯から、ガーター勲章を規範に左肩からかける大綬章を大綬の中でも上位と見做す傾向があります)

女性の勲章佩用、どうやってつけるのか

男性は長らく詰襟あるいはシャツを着た装いが正装であったため、喉からぶら下げる勲章を佩用しても違和感ないスタイルでした。
しかしながら女性の正装は胸元を広げたドレスであることが多かったことから、中綬を喉元から下げるにはファッションとして似つかわしくないスタイルです。
そういった経緯からか、女性は中綬や小綬のリボンを蝶結びにするのが一般的となりました。大綬については男性と同じくサッシュを佩用するスタイルでしたが、日本の宝冠章がそうであるように、大綬に付属する正章の結び目を蝶結びとする例もあります。

中綬の勲章について、綬を蝶結びにしたタイプ。通常は左の肩に近いあたりに留めて佩用します。

なお、女性でも軍人であれば男性と同じように佩用するのが一般的です。
日本における自衛官の場合、女性自衛官が略綬を佩用する際には一段あたりの数を減らしていますが、そのほかには特に差異なく運用しています。

勲章と褒章、その歴史と日本を含めて世界中で異なる定義

14世紀に近代勲章制度の祖であるガーター騎士団が創設されました。その目的は円卓の騎士への憧れや王権の強化であるとされていますが、後者については他国も仕組みを真似るようになります。
ガーダー騎士団の創設から約百年ほどでブルゴーニュ公が金羊毛騎士団を創設し、百年戦争で危機を迎えたブルゴーニュの封建関係の再建に乗り出します。このブルゴーニュがイングランドと協力関係に入った際、ガーダー勲章と金羊毛騎士団の勲章を交換するといった、勲章を外交の道具として使うという用途にも使われるようになりました。
ナポレオン戦争が起こった近代になると、ナポレオンの作り上げたレジオンドヌール勲章を手本のひとつとして勲章制度が整理されることになります。勲章を授かるのは騎士団への加入となりましたが、勲章の等級によっては騎士として扱われませんでした。
イギリスにおけるバス勲章や大英帝国勲章は5等級が存在しますが、騎士である勲爵士として認められるのは上の2等級で、残りの3等級は騎士ではない騎士団の一員となります。ガーター勲章は単一等級のもので、最近の受勲者であるトニー・ブレア元首相はこれにより英国の勲爵士すなわちナイトとなりました。
一方で英国では騎士身分とはならないものの、一部の勲章より高い格の栄誉があります。特にジョージ・クロスはガーダー勲章よりも上位の格として定められているものです。
日本において言葉の定義としては、騎士に叙勲される栄誉を勲章、叙勲のない栄誉を褒章とするのが一般的です。しかしながらジョージ・クロスは特に格が高いことから、ジョージ・クロス勲章として紹介されることがあります。アメリカの名誉勲章も騎士団への叙勲がありませんが、勲章と訳されているのも格の高さからです。

ドイツではプロイセン王国時代に、黒鷲勲章やプール・ル・メリット勲章といった騎士団を有する勲章が作られました。黒鷲勲章は大綬の勲章でプール・ル・メリットは中綬の勲章です。これとは別に大きな戦争があると鉄十字章が作られました。
鉄十字章のトップは大十字章で、更に大鉄十字星章がこれまで2名にだけ与えられました。大鉄十字星章は名前の通り星章で胸に付けましたが、大鉄十字章は中綬の勲章で、喉元に他の勲章をつけていると第一ボタンからリボンを下げて佩用するような着用もしています。
この下位として一級鉄十字章と二級鉄十字章がありました。一級鉄十字章は星章と同じように胸へ取り付ける褒章で、中綬より下位の章にもかかわらず他国では大綬の副章として扱われる星章のような扱い方をする特徴となっています。著名な受章者としてアドルフ・ヒトラーがいます。なお、二級鉄十字章は小綬式の佩用です。
第二次世界大戦がはじまると、ナチスドイツはヘルマン・ゲーリング国家元帥の実質専用勲章として大鉄十字章を与えてしまい、一級鉄十字章より上位の褒章がなくなりました。プール・ル・メリット勲章も廃止されていたことがあり、武勲を讃える栄誉として新たに制定されたのが騎士鉄十字章です。
騎士鉄十字章は大鉄十字章の下位にある章として4等級が作られ全て中綬の佩用法でした。
黒鷲勲章やプール・ル・メリット勲章など制度がなくなったドイツにおいては、ゲーリングしか佩用できない大鉄十字章の下位である騎士鉄十字章が最高の名誉であり、鉄十字章は特に騎士団を有していないとはいえ騎士叙勲される勲章に相当と解釈もできます。
一般的に十字は高位栄誉のシンボルとして好まれていて、米軍においては名誉勲章に次ぐ栄誉が陸海空三軍それぞれで定められている十字章です。同等の栄誉は英国においては殊勲勲章あるいは殊功勲章として騎士叙任を受ける格となっています。米国の十字章の下位には殊勲章が存在し、英国においても殊功勲章より下位の殊勲章があります。
現代の日本においてはこういった栄誉を三等級に分類していて、最上のものを勲章、それに次ぐものを褒章、そして防衛記念章のような記章を栄典の一部としています。防衛記念章はこれまで米国で使われているユニットアワードのように略綬だけのものでしたが、近年では一部の防衛記念章についてメダルが制定されるなどの改革が行われています。

勲章の意義

勲章とは古くは君主が、現代では国家元首が個人の業績を讃えて、あるいは王族のような国家の象徴を装飾するアクセサリーとして与えてきたものです。
戦友を守るために亡くなった受章者の多い米国名誉勲章や、人命救助などに対する勇気を叙勲理由としているジョージ・クロスのように、献身行為を讃えて使われる勲章は数多くあります。
勲章のもつ名声から、騎士鉄十字章を求めてやまない者を「のどの病気にかかっている」などと揶揄する言い回しがあるように、名誉を求めて他人の犠牲に頓着しない振る舞いをするものが出てくるのが実態です。
煌びやかな勲章に身を飾っているものが、実際にはどのような行為の下でそれを帯びるに至ったのか。
輝きが相応しいだけの尊敬に値する事柄があったのか、今もそれに相応しいだけの人物であるのか。
表面だけで測ることなく、勲章が結実するに至った歴史を知ることが、佩用者を改めて尊敬し、人の模範を知ることにつながるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました